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市民農園の開設

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現在、会社員として勤務していますが、農業をしていた父が亡くなったため相続した農地を「市民農園」にして地域住民に利用してもらいたいと考えています。どのような方法がありますか?

市民農園とは、営利を目的としない、小面積の農地を利用して野菜や花などを栽培するための農園のことをいいます。
一般には、レクリエーション、子どもたちの学習・教育などの目的で、比較的小さい面積の農地を利用しての自家用の野菜等を栽培する農園をいいます。
営利を目的としないため、原則として農園の利用者が栽培・収穫した農産物を他者への販売(出荷)することは認められませんが、例外として、自家消費を超える分については他者へ販売することは許容されています。

 

市民農園の開設は、農地の耕作を「所有者が自ら行う」か、市民農園の「利用者が行うか」で分かれます。農地の所有者が耕作する場合には、農園利用方式と呼ばれる形態での開設になります。農園利用方式は、農地所有者が農地を耕作することを前提とし、市民農園利用者の立場は、農地所有者の栽培計画に従い農業指導を受ける農業体験として取り扱われます。
利用者に農地を貸すものではありませんので、農地法等の規制は受けません。

 

これに対して、市民農園の利用者が耕作する場合には、農地を貸すことになります。この場合には、農園開設者(株式会社、NPO法人等)または農園利用者に貸し出すことになり、農地法等の法規制を受けることになります。ただし、以下に述べるとおり特別法によって農地法等の規制が緩和される場合があります。

 

特定農地貸付法による市民農園の開設(特定農地貸付け)

特定農地貸付法は、農地の貸借に関する農地法3条1項による規律の特例を設けることにより、市民農園の開設を容易にする法律です。

 

対象となる農地の貸付けは、

  1. 各利用者への貸付け面積が10a(1000u)未満で相当数の者を対象として定型的に行われる
  2. 貸付期間は5年を超えない
  3. 利用者が行う農産物の栽培は営利目的でないこと

貸借期間は5年を上限とされ、農地法17条(法定更新)、18条(賃貸借契約解除についての規制)も除外されています。

 

農地所有者自身が市民農園を開設し利用者に貸し出す方法と、農地を所有しない株式会社・NPO法人等が農地を借りて市民農園を開設して利用者に貸し出す方法があります。

 

株式会社、NPO法人等が市民農園を開設する場合には、農地の所有者は市民農園の開設者ではなくなり、市民農園の運営(経営)自体もしませんので、高齢や会社勤め等の理由により運営をすることができない場合にも有用といえます。

 

また、相続税納税猶予制度の適用を受けている農地であっても農地所有者が市民農園を開設し、利用者に農地を貸す場合には、納税猶予の猶予確定事由にはならず納税猶予は継続されます。農地所有者が(地方公共団体等を経由して)第三者に農地を貸し、その第三者が市民農園を開設し利用者に農地を貸す場合にも納税猶予は継続されます。

 

市民農園施設を設置する場合には、別途農地法4条または5条の許可および都市計画法の「開発許可」が必要となります。都市計画法の開発許可についても通常の規制どおりとなりますので、市街化調整区域に市民農園を開園し休憩施設等を建設する場合には事前によく確認する必要があります。

 

市民農園施設とは、市民農園として利用される農地に付帯して設置される、農地の保全または利用上必要な施設です。
農機具収納施設やトイレ、手洗い場、水飲み場、駐車場、園路、掲示板、柵、照明施設の他、管理事務所や休憩施設、農作業講習施設、簡易宿泊施設なども該当します。

 

特定農地貸付法による開設手続き

農地所有者が市民農園の開設を希望する株式会社、NPO法人等に農地を貸し付ける場合と、農地所有者が自ら市民農園を開設する場合とで手続きが異なります。

 

株式会社、NPO法人等に農地を貸し付けて市民農園を開設する場合、農地所有者は直接、地方公共団体等と賃貸借等の利用権設定契約をします。開設までの流れは、まず、市民農園の開設希望者が地方公共団体等との間で貸付け協定を締結します。その後、開設希望者が貸付け規定を作成し、農業委員会に貸付け規定の承認を申請し、対象となる農地の所在地を管轄する農業委員会の承認を得られれば開設が可能となります。
そして、市町村等と開設希望者が農地の利用権設定契約をし、市民農園利用者と市民農園の利用についての賃貸借契約等をします。

 

農地所有者が自ら市民農園を開設する場合、まず、市町村長との間で貸付け協定を締結し、その後、貸付規定を作成し農業委員会に承認の申請をします。農業委員会から承認を得られれば市民農園の開設が可能となります。その後、市民農園利用者と市民農園の利用について賃貸借契約等をします。
地方公共団体等への利用権設定契約書や貸付規定などは、対象農地を管轄する農業委員会に問い合わせるとよいでしょう。

 

出典:農林水産省

 

 

都市農地貸借円滑化法による市民農園の開設(特定都市農地貸付け)

都市農地貸借円滑化法は、市民農園に関連する部分についていえば都市農地(生産緑地)の貸借について農地法の特例を設けることにより市民農園の開設を容易にする法律です。
対象となる市民農園利用者への農地の貸付けは、前述した特定農地の貸付けの要件は以下の通りです。

  1. 各利用者への貸付け面積が10a(1000u)未満で相当数の者を対象として定型的に行われる
  2. 貸付期間は5年を超えない
  3. 利用者が行う農産物の栽培は営利目的でないこと
  4. 地方公共団体及び農業協同組合以外の者が農地所有者から賃借権または使用貸借による権利の設定を受けていること
  5. 農地所有者、市町村、市民農園開設者の三者で農地の適正利用に関する内容を定めた協定を締結すること

前述の特定農地貸付においては、株式会社、NPO法人等が市民農園を開設する場合には、農地の契約関係は、農地所有者から地方公共団体等を経由し転貸借の形式で市民農園開設者に利用権設定されていました。しかし、特定都市農地貸付においては、農地所有者から市民農園開設者に直接、貸出すことができます。

 

この法律によって市民農園を開設できる場所は、生産緑地のみです。

 

市民農園施設を設置する場合には、特定農地貸付法による市民農園開設と同様に別途農地法4条・5条の許可および都市計画法の開発許可が必要となります。
生産緑地は市街化区域内にありますので、周辺に住宅地が多く、地域住民による市民農園の利用を見込むことができ、市民農園を開設するエリアとしは有利といえるでしょう。

 

都市農地貸借円滑化法による開設手続き

都市農地貸借円滑化法による開設は農地所有者が市民農園の開設を希望する株式会社、NPO法人等に生産緑地である農地を貸し付ける場合に利用する制度です。
市民農園を開設する株式会社、NPO法人等が農地の所有者および市町村との協定を作成します。また、市民農園開設後に市民農園利用者との間に適用される貸付け規定も最初に作成します。
対象農地の所在地を管轄する農業委員会に、協定および貸付規定を添えた特定都市農地貸付けの申請をします。農業委員会の承認を得られれば開設が可能となります。

 

出典:農林水産省

 

 

市民農園整備促進法による市民農園の開設

市民農園整備促進法は、市民農園施設を備えた市民農園の開設について農地法4条、5条の特例を設けることにより市民農園の開設を容易にする法律です。特定農地貸付け(特定都市農地貸付けを含みます)により貸し出そうとする農地について、市民農園整備促進法の対象地域であれば、市民農園整備促進による「市民農園の開設の認定」を受けることにより農地用の転用許可(農地法4条、5条)および、都市計画法の開発許可についての特例が適用されることになります。

 

市民農園区域は、利用者の利便性等を考慮して市町村が指定します。

 

市民農園を開設したい株式会社、NPO法人等に対して農地を貸し付けることも可能です。この場合、特定農地貸付として貸し付けるのであれば所有者は地方公共団体等に貸付け、株式会社、NPO法人等は地方公共団体から借りることになります。
特定都市農地貸付けとして貸し付けるのであれば、所有者が直接株式会社、NPO法人等に貸し付けることが可能です。

 

市民農園整備促進法による開設手続き

市民農園整備促進法による開設手続きは、特定農地貸付け及び特定都市農地貸付けされる農地が対象となります。市民農園を開設しようとする者(農地所有者、農地所有者ではない株式会社、NPO法人等)が市民農園の「整備運営計画」を作成し、それを添付した市民農園開設認定の申請書を対象農地の所在地を管轄する市町村に提出します。
当該市民農園の開設が適当である旨の認定を受けることができれば、農地転用許可(農地法4条、5条)があったものとみなされ、市民農園施設の開発行為等については、都市計画法に基づく開発許可・建築許可が可能となります。

 

出典:農林水産省

 

 

農園利用方式

市民農園の開設に当たっては、「農園利用方式による市民農園の開設」という方法もあります。
この方法は、上述したような農地を他者に貸し出す方法ではありませんので、上記3つの法律のほか、農地法などの農地の貸借を規律する法律の適用は受けません。

 

この方法では、農園利用者は農地の耕作者である農園開設者(農地所有者)の補助者として農地を耕作するものです。

 

作付けの計画などは農園開設者(農地所有者)が行い、その指示の下、農園利用者がレクリエーション等として農作業をするものです。
収穫した農産物は農園開設者(農地所有者)から農園利用者が購入する形になります。
(農園開設者(農地所有者)と農園利用者は、このような内容について農園利用契約等として締結することになります)


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