農地の納税猶予の特例とは?
ツイート土地を相続すると相続税がかかりますが、農地の場合、一定の要件を満たすことで相続税の納税が猶予される制度があります。
これを「農地等の納税猶予の特例」といいます。
特例を受ける農地のことを「特例農地」と言い、猶予される税額のことを「農地等納税猶予税額」と言います。
特例を受けるための要件
この特例を受けるためには、被相続人(亡くなった方)、相続人、それぞれが要件をみたしていなければなりません。
被相続人(亡くなった方)の要件
特例を受けるためには被相続人は以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
- 死亡の日まで農業を営んでいた人
- 農地等の生前一括贈与をした人
- 死亡の日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人または農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため貸借権の設定による貸し付けをし、税務署に届出をした人
- 死亡の日まで特定貸付け(市民農園等で)行っていた人
農業を営んでいたかどうかは、耕作行為を反復継続して行っていたかどうかで判断されます。耕作した生産物を自分で消費している場合や、会社、官庁等に勤務しているなどであっても耕作を反復継続していた場合は、農業を営んでいた人に該当します。
また、死亡の日まで農用を営んでいない場合でも、老齢または衰弱のため、生前に住居および生計を一にする2親等内の親族に農業経営を継いでいた場合も農業を営んでいた者に含まれます。
相続人の要件
特例を受けるための相続人の要件は以下の通りです。
相続税の納税猶予の特例の適用を受けることのできる相続人は、相続税の申告の提出期限までに相続または遺贈により対象農地等を取得し、農業経営を開始し、その後引き続き農業経営を行うと認められるもので、農業委員会の証明を受けた者となります。
相続税の納税猶予に関する適格証明書
相続税の納税猶予の特例の適用を受けるために、農業委員会からもらう証明書のことを「相続税の納税猶予うに関する適格証明書」といいます。
この適格証明書を発行してもらうには、農業委員会に対して申請をする必要があります。
多くの農業委員会では、証明書の発行申請 → 現地確認 → 農業委員会による決議を経て証明書が発行されます。
申請から発行までの期間は1カ月以上かかる場合もあるため、申告期限の3カ月前までには適格証明書の申請をするようにしましょう。
また、申請までに特例農地について分割協議を終わらせておく必要もあります。
証明書発行の際に必要となる書類
証明書発行の際に必要となる書類は各農業委員会によって違いがありますので、事前に確認が必要ですが、主なものとしは以下ような書類が必要となります。
- 相続税の納税猶予に関する適格者証明書証明願
- 特例適用農地等の明細書
- 土地登記事項証明書
- 納税猶予の特定適用の農地等該当証明書
- 現地案内図
- 遺産分割協議書(特例農地に係る相続登記が完了していない場合に必要)
- 被相続人の出生から死亡までの除籍謄本、改製原戸籍謄本等または法定相続情報一覧図(特定農地に係る相続登記が完了していない場合に必要)
納税猶予税額を納付しなければならなくなる場合
納税猶予税額を納付しなければならなくなることを、猶予期限の確定(猶予の取消)と言います。
猶予期限が確定してしまうと、猶予されていた税額の全部または一部を納付しなければなりません。
猶予期限の確定となるケースは以下のような場合です。
- 特例農地について譲渡等があった場合(農地転用も含まれます)
- 特例農地等に係る農業経営を廃止した場合
- 継続届出書の提出がなかった場合
- 生産緑地の買取の申出等をした場合